白川流の大祓

白川流の大祓詞

この前に、白川神道のお話しをしましたが、江戸時代末期まで代々、花谷家では男子が16歳になると上洛して白川家に出向き、1ヶ月あまり神道の作法や祝詞の修行を致します。今は大阪市の鶴見神社の宮司をしていますが、もともと奈良県吉野郡十津川村・大塔村(今では五條市)の出身です。

「古事記」「日本書紀」によると神武天皇東征のときに、熊野から大和への道案内をしたのが八咫烏(やたがらす)と記載されており、京都の上賀茂神社・下賀茂神社の社家である鴨氏の発祥の地と伝承されております。今でも奈良県吉野郡には私を含めて親戚が、昔と変わらず、その領地を所有しています。その理由は天武天皇の壬申の乱(672)の際にいちはやく駆けつけ、大友皇子軍と戦ったために、戦功により代々租税を免除され、徳川時代になってもさしたる租税が徴収されなかった歴史があるからです。

また建武の親政以前、後醍醐天皇の皇子大塔宮護良親王を吉野でお守り挙兵した竹原八郎入道も一族です。妻の実家も南北朝合一以後、それに反対し後南朝を立てて数十年間、吉野郡上北山村で足利幕府に抵抗していました。義父は最後の後南朝の北山宮様を御祭神としている北山宮の宮司でした。このように吉野郡一帯は尊王の歴史が続いています。その意識は今も強く残っております。

尊王の歴史があるため、奈良県吉野郡一帯は江戸時代から明治維新まで御所の警備にも当たっていました。また花谷家は往古より丹生川上神社下社の神職家の丹生氏(にゅうし)と縁戚関係があるため、中世より神祇伯である白川家との関係が明治維新まで続きました。

ところで、ご先祖は白川家の門人となると、すぐに「大祓詞」「禊祓」について学んだそうです。それが終了すると風折烏帽子と印加状を授与され、「白川家御用」という提灯をもらい帰ったそうです。このようなことから、今も「大祓詞」と「禊祓」は伝承されたままで、使用しております。

そのなかで6月30日の夏越大祓は恐怖です。午後4時ごろに執行される茅の輪の儀式は、神社本庁が定めたとおりの大祓詞を読み一般の神社と変わりません。ところが午後8時ごろから行われる大祓式は年に2回(6月30日と12月30日)宮司と禰宜だけで執行します。これには一般の人は参列できません。ご先祖が白川家から伝承された祭式で行うと、先代も神気で身体が押さえつけられ、終了した後も声が出なかったことがたびたびありました。

このことから先代から宮司職を引き継いだ直後から、この夜の大祓式を執行する前から、何とも言えない威圧感を感じ、数日前から夢に出てくる状態でした。初めて宮司として執行した時のことは忘れることはありません。式の直後から正座して九神を降神する儀式から祝詞を奏上し、先祖から伝承された大祓詞を奏上するまで、神がかるトランス状態に陥りました。私が「無」の状態で執行しているのではなく、あきらかに「神霊」が乗り移り、やらされている状態であることがわかります。それは、私の力で奏上しているのではなく、かってに奏上させられている実感が重く感じられるのです。終わると疲労感ですぐにぶっ倒れて寝てしまいます。一度、下痢のために私の代わりにある神職が夜の大祓式を執行しました。なかなか神殿から出てこないので見に行くと、失神していました。それからその神職は二度と、代拝することを拒否しています。今年も6月30日が近づいてきました。そろそろ緊張してきました今日このごろです

宮司の私が言うのはお恐れ多いことですが、お上(天皇陛下)にあらされては、神武天皇の建国以来、歴代の天皇は道徳の確立に励まれておられます。新嘗祭などの宮中祭祀の中で、「国安かれ、民安かれ」とご祈念されることは、一介の村社の宮司さえ重労働に感じるのに、お上はお上しか出来ない国民と国の安泰を祈念される祭祀があられます。私たちの日本国が平和で安心して暮せるのも、「私」を完全に無視した「公」のお上の祭祀があるからだと感謝申し上げてもよいのではないかと思います。

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コメント 2

Peter

Internet上では、いろんなお気軽お手軽に神霊からmessageが得られるように表現している内容や、秘術や秘伝にのみ目を向けているような表現に遭遇しますけど、鶴見神社の宮司さんと神職さんの6月30日の大祓式への覚悟の箇所は緊張感が伝わってきます。
by Peter (2022-06-09 08:43) 

藤崎

素晴らしいお話、ありがとうございます。現在も鶴見神社にいらっしゃるのでしょうか?一度お話をお伺いしたいです。
by 藤崎 (2023-09-02 15:39) 

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