趣味、ツボ観察

趣味、ツボ観察

人から宮司さんの趣味を聞かれて「 人間のツボ観察です 」と答えると、たいていの人はあたかも自分が観察の対象にされたかのように、「私は何処が悪いのか、教えてください」といわれます。一般の人は自分が観察されることを好まないものです。
自分に対する他人の目について意識するようになるのは、恐らく思春期の始まり頃のように思いますが、私の場合は神社の息子として、この世に生を受けてからまもなく、他人の目を意識するだけでなく、何となく他人の行動も観察するようになりました。

神社の宮司の息子さんは、品行方正・学力優秀でなければなりません。何処へ行っても私のことは皆さんが知っておられるのですが、周囲に注目されている私は相手のことは全く知りません。このような環境の中から、私は逆に周囲の人の行動を観察し、記憶するようにしました。その後、蓄積された情報量が増えると無意識のうちに類型化をするようになり、行動だけでなく人の表情や発言もなるべく観察するようになりました。

初対面の人に会うと無意識の内に過去のデータから類似の印象を持つ人を選び出して、その人との比較をするようになりました。相手の性格は、相手の行動は、私との相性について好ましい相手か、どちらかといえば嫌な相手か、どちらでもない部類の人間かどうかの判定です。
もちろん相手の第 一印象とその後に受けた感じではかなり異なる場合がかなりありました。特に若いころには、女性について交際経験が未熟な内は相手の容姿によって全体を判断し勝ちで、たとえば美人であればあるほど、性格、知能などの内面的なものまでも美化し、優れていると思い込む過ちを犯しました。

大学を卒業し神社に勤務しながら夜間に柔道整復師・鍼灸師の養成学校に通学し、人間の体質や病気があるのか、どうかの観察を趣味として始めました。愚者は自分の経験でしか学べない というのがありますが、愚かな私は観察の失敗を数多く重ねながら、いろいろなことを学び人間観察の精度向上を図りました。

世間には性格の良い人、悪い人、ずるい人、正直な人など色々な性格の人がいますが、その人たちのツボはどのあたりに集中しているかを判断できるようになったのです。その人と長い時間を掛けて付き合えばあるツボは程度観察可能になりますが、それでは遅すぎる場合もあります。顔を見ただけでだいたいその人の 病気が何処にあるのか、判断できるように研鑽を重ねました。

人のツボを見る目は一般に若い人よりも社会経験を積んだ年輩の人の方が、見えやすいと思います。ところで私は、治療穴つまりツボを見つけるときには、患者さんの「言葉をそのまま信用しないこと」にしています。

人のツボを見つけ判断する場合には、その時の顔の表情筋を注意深く観察することが必要です。顔の表情は写真撮影の時のように「 チーズ 」の発音をすれば笑顔に似たものが作れますが、作り笑いの顔に騙されてはいけません。一方 「 目は心の窓 」 といいますが、「 心の窓 」 の目だけは 「 作り笑いの目 」 はできません。顔は笑っていても「 目が笑わない者」 患者さんは以外にも大勢いますが、そういう種類の患者さんは、麻痺や疼痛などの難病が潜んでいる場合が多いのです。温泉やプールへ行きますと、身体の悪いツボが見えてきますので、〔あの人はここが悪い、あの人は腰痛だ、胃が悪いとか〕ツボを見てしまうので自分が楽しくすることはありません。

ある朝、友人が私の神社にある鍼灸院を訪ねてきました。治療するのではなく同窓会の案内状を持ってきただけなのですが、友人の顔みれば眉間、鍼灸医学で言えば印堂というツボにしわがたくさんあり、非常に危険な状態でした。私は無料でよいので治療する、というと友人は「後で治療に来るから」といって早々に出て行きました。その数時間後、胸部動脈瘤が破裂して返らぬ人となりました。悔やんでも仕方がないのですが、私自身も同じ経験をしました。毎朝、洗面するときに自分の顔を鏡で見ますと、眉間にしわがあり、これは胃がんになったなあ、と思ってすぐに胃カメラを飲みますと、まさしく胃がんでした。初期の胃がんは無症状の状態が多いのです。初期の状態でしたので軽くてすみました。

ツボ観察をする際に最も重要なことは、何かの折に チラリ と顔を横切って診る、 100分の1秒の表情 にその人のツボが現れるので、それを絶対に見逃さないことです。鍼灸師には、日頃から「人のツボを見る眼力 を養うことが大切です。

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