「自分は死に遅れた」という思い

「自分は死に遅れた」という思い
今年も5月25日が訪れます。私にとって5月25日は特別な日です。浪速高校の学生のときから皇學館大学の学生時代まで、5月25日は楠木正成が湊川で戦死された日でもあり、楠公祭に必ず出席していました。大阪では住吉大社で執行され、時には平泉澄先生の「大楠公を仰ぐ」という題目で講話がありました。高校時代の時には2時間あまりの正座がきつくて倒れそうでした。

楠木正成は私のご先祖といっしょに鎌倉幕府を打倒し、その後も後醍醐天皇の吉野朝に共に足利幕府と戦った経緯があり、親しく感じます。大学時代の恩師、荒川久寿男先生から先生の著「維新前夜」(日本教文社)の続編を書きなさい、といわれて先生の没後から数十年も経てから「続維新前夜」という題目で原稿を日本教文社に持ち込みました。そのときも5月25日にしました。ところが日本教文社から「今は、わが社は、このような歴史書は出版していません。かわりに展転社という出版会社を紹介する」と言われました。

展転社に原稿を持ち込みますと「続維新前夜」という本の題名では出版できません、といわれました。しかし原稿の内容はすばらしいので題名をあらたに考えてください、といわれまして「幕末入門書」志士たちの死生観という題目で出版しました。

恩師の荒川先生から「君は神社の跡取り息子だから、久留米(福岡)の水天宮という神
社の神職、真木和泉守を見習って生きなさい」といわれました。今でも彼のような、真面目に神明奉仕し、民衆の信頼を得ており、人格的にもすばらしい人物になりたいと願っています。

彼は文化十年(1813)に生まれ、少年の頃に「絵本楠公記」を読み、楠木正成(楠公)の忠義に感激し、爾来、平和のときも幽閉のときも、肺結核で喀血しょうが楠公の戦死した命日、五月二十五日には楠公祭を行い、彼自身の忠義の志を励ましていたのでした。彼の遺書というべき「何傷録』」(かしょうろく)の中の楠子論に「ああ楠子の忠義けだし天下一人なり」とあり、彼は生涯、楠木正成の忠義の生き方を学び心の支えにしていたのです。

もう一人、私の尊敬する人物で楠公を心の支えにした人がいます。それは大東塾の影山正治先生です。昭和49年ごろだったと思いますが、記憶は定かではありません。皇居勤労奉仕で偶然に先生とお会いしたことがありました。先生は黙々と清掃奉仕をされておりました。言葉を交わすこともかなわないほどでした。

先生と先代は知り合いで「天誅組の変「を通しての交流がありました。影山正治先生は、
昭和20年の終戦時、中国へ出征されておられました。その間、昭和20年8月25日大東塾関係者14名が代々木公園で割腹自殺する事件がありました。影山先生はこの時一緒に死ねなかったことを生涯悔やんでおられました。14名の神葬祭を執り行ったのは私の師匠ということもまた運命です。

影山先生は歌人として有名で、不二歌道会を主宰するとともに不二出版を設立されました。昭和29年には大東塾を再建し東京都青梅市に大東農場を開かれました。生前、影山先生から「天皇陛下万歳」と死んでいった戦友や大東塾の同志たちの言葉には、左翼学者のいう偽りがなく純粋な誠の心があった。彼らのいう「天皇陛下万歳」の言葉の背後に両親や家族の姿、そして郷土や祖国の姿が思い浮かんでいたのだ。端的に「天皇陛下万歳」というのは馬鹿げている人物は、思考が足りなすぎる、といわれたのが思い出します。

昭和54年(1979年)5月25日、影山先生は割腹した後に散弾銃で自ら命を絶たれました。生前、口癖のように「人間は潔く、意志的に死なねばならない」と語っておられたのが印象的です。さらに昭和64年1月、昭和天皇崩御の際に殉死した人は全国で5人もおられます。その中には、私が知っている大東塾の関係者もおられます。
      
私は新右翼ではありません。新尊皇攘夷派です。私もそうでしたが、日本の民族派あるいは新右翼と呼ばれる人たちには、「自分は死に遅れた」という認識を持っている人物が多いと思います。還暦を過ぎた私たちの仲間は、昭和45年11月25日、三島由紀夫先生と森田必勝さんの自決、そして昭和54年5月25日の影山先生の自決、「自分は死に遅れた
」という自覚をしています。

平成13年10月9日、大東塾・不二歌道会代表鈴木正男先生が東京都青梅市にある同塾の農場内で首をつって自殺されました。鈴木先生も「自分は死に遅れた」という強烈な思いがあったと思います。十四烈士、そしてその後を追った影山先生、その後を追わなければという、自らの自覚で死を選ばれたのでしょう。

私は新尊皇攘夷派を名乗っています。特攻隊と同様に、もし公のために死ぬときに、自分は何と叫ぶのか、を考えたことがあります。「天誅」と叫んだらよいのか、やはり「天皇陛下万歳」を叫ぶことになると思いますが、大和言葉で「すめらみこと、いやさか」を叫んで果てると思います。
 

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