白川神道について

白川神道について

私は子供のころから先代宮司が朝夕の二回、神殿で毎朝神拝式の祝詞・毎夕神拝式の祝詞奏上をする声を聞いて育ちました。しかしながら時には、大祭などの祭祀の前に、変わった節回しの祝詞としを聞いておりました。先代に聞くと「これは先祖代々の祝詞や」というだけでした。

今ならば大祭前の潔斎の鎮魂式をやっていたのだ、とわかります。私は、これが普通だと思っていたのですが、神道系の浪速高校へ入学し、神道の科目の先生にお話しすると、「それはお前のところの祝詞は、白川流の祝詞で普通の神社と違うのや」と言われました。このことを先代に言うと、「そうや、ご先祖は代々、白川家の門人やったからや、祝詞も違うし、祭式の作法もお供えの仕方も違う」という答えが返ってきました。
そのときから先代は何かと忙しい人でしたので、当時、母親も神職の資格を取得しておりましたので先代の代わりに奉仕していました。あるとき先代から神職の資格の無い高校生の私に、「浪速高校は大阪府下の神職によって創立された高校や、普通の高校生よりましや、神職の資格はないけれど、この機会に白川流の祭式や祝詞の作法を教える、また神社神道の作法も教えるから日曜日には手伝え」と言われ、坊主頭でご奉仕させてもらいました。

自分で言うのは何ですが、氏子の評判もよく、神道で先祖まつりをされているご家庭に、年祭のご奉仕に行くと「お宮の若さん、親父より祝詞はうまいやないか、これは玉串料や、宮司には内緒やで、これは若さんの小遣いや」と言われ、そんなわけで別途収入もあり一生懸命、にわか神主の修行をしました。本格的に神道の作法を習うのは大学に入ってからです。

その後、伊勢市の皇學館大学に入学し、白川神道を研究課題の一つに選びました。当時、教授の鎌田純一先生〔現、宮内庁侍従職御用掛〕に白川神道のことを勉強したいというと、親切にいろいろと指導を戴き、神社本庁教学部長岡田米夫先生をご紹介してもらい、早々に手紙を書き返事を頂戴しました。内容は「白川家は絶えてしまい、その流れを汲むのが禊教と金光教があるが、本格的に祭儀を教えてもらうのは無理である。自分の神社の方法で守って行きなさい。しかし奈良県天理市の石上神宮の宮司とそこにおられる中村新子さんに会ってお話しでも聞きなさい」というアドバイスを受けました。実家の大阪に近いこともあって夏休みを利用してお話しを聞きに行きました。そこで中村新子さんからいろいろと白川神道について聞くことが出来ました。そして幕末の白川家の最後の学頭高浜清七郎のひ孫にあたる高浜浩さんを紹介され京都の家にも訪ね、いろいろと教えてもらいました。

ここで簡単に白川神道について説明しますと、平安時代後期以降、神祇官の長官を世襲した白川伯王家に伝わった神道のことです。天皇家直属の神職の家が白川家で、そこの神道を白川神道または伯家神道と言います。しかし、白川家の下に属する神祇官の次官の吉田家が、独自の吉田神道を確立し、室町時代から江戸時代の中期ごろまで全国の神社の大部分を支配するようになっていました。白川家は吉田神道に対抗して独自の教養を形成し、神祇祭祀の道の復興と継承を標榜して拡大に努めましたが、ときすでに遅く明治維新となり、新政府によって全国の神社は太政官の神祇局によって統一されてしまいました。その後、内務省神社局によって統制され、白川神道・吉田神道の作法や祝詞など廃れてしまいました。
白川流の祝詞は「表」と「裏」があり、「表」は氏子や祭祀の普通の一般の神社の祝詞や祭式はあまり変わりありません。ただ「祓詞」が違います。地鎮祭のお祭りの仕方も違います。
「裏」は通常、氏子や崇敬者・参拝者など誰もいない神殿で、神職だけがする行法や祭祀です。たとえば「裏」の「鎮魂」「大祓式」「乞巧奠(きっこうでん)」の際には、独特のリズムと大和言葉の祝詞を奏上します。「阿知女」(あちめ・降神の際の作法)作法も独特のリズムでゆっくりと奏上します。

時間に余裕があると、朝拝の際に白川流のゆっくりしたリズムの祝詞を奏上すると、自然に腹式呼吸法ができ、気分が晴れます。この呼吸法が「息吹長世」と呼ばれるものです。昔は鈴や太鼓を鳴らして奏上していたということです。朝拝後、すぐに鍼灸の治療が始まりますので、ちょうど自分の「神気」を充実させて臨床に従事することができますので、良いことなのですが、神社の朝は午前6時から午前9時まで清掃に明け暮れ忙しくしており時間に余裕がないので、「表」の大祓詞だけを奏上しています。氏子から付けられたあだ名が鶴見の「あめのほうきの神」です。「あめのほうきのかみ」は時間に余裕がないのです。
 



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