松茸と「万葉集」

松茸と「万葉集」

秋の香りと言えば松茸です。今年の9月ごろから、宴会や会食が続き松茸を多く食べた年は珍しいと思いす。鶴見神社の秋祭の神饌として松茸の数が多い年も珍しいと思います。いつもの年は、国産ものは匂いだけで辛抱しなければならないほど高価な食材でした。しかしこれも夏の暑さの異常気象のお陰で、松茸が豊作だったことが幸いしています。

ところで茸の歴史は古く縄文時代後期(4000年前)まで遡ります。古代人はキノコの毒の有無を判別する知識を苦い経験によって蓄え、万葉時代に松茸は既に食され、また好まれていました。

焼いて醤(ひしお―醤油の原型)を付けたり、塩をふったり、また現在でいう松茸ご飯や吸い物にしてその香りと歯ごたえを味わったものと思われます。「万葉集」(巻10の2233。作者不詳)の中にも松茸が登場します。

 高松の この峰も狭(せ)に 笠立てて 満ち盛(さか)りたる 秋の香のよさ

 
高松とは奈良の高円山(たかまどやま)のことです。全山に足の踏み場のない程にびっしりと生い並ぶ松茸。その松茸が今を盛りとかぐわしい芳香を放っている様子を詠ったもので、今日では想像も出来ない光景です。

解釈しますと、高円山の峰も狭しとばかりに、まぁ見事に茸の傘が立ったことだ。眺めもさることながらこの香りの良さ、早く食べたいものだ、という単純で素朴な万葉人の食欲の秋を感じさせる歌です。


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